コトアゲ Up with expression
ずいぶん前。関西の支社に出張したときに、夕方支社長さんがお子さんを連れてオフィスに現れた。その日、病院から退院したので、長男と一緒にオフィスに立ち寄ったのだそうだ。
「ああ、いい会社だなあ」
ひとりごとなのか、何回かそうおっしゃっていた。
言葉で言い表すことが、状況を好転させる。だから、新年には、いいこと、おめでたいことをきちんと言葉に言い表す習慣がある。これを コトアゲ (ことばによって、上げる)という、
という慣習を知ったのは、その何年かあとだ。少し呪術っぽいけども、心理的な効果はあるように思う。
視点を変える、という意味では、認知療法っぽくもある。
コトアゲ。
Up by expression from positive side.
「ああ、いい会社だ」
「ああ、いい同僚たちだ」
「ああ、いい仕事だ」
「ああ、いいプロジェクトだ」
おりにふれ ひとりごとをつぶやいていたら、会議のスタート前、となりに座っていた古くからの仲間(ぼくよりかなり若い)からちらっと視線をおくられた。何をのんきな、と思われてもいけないので、なぜそう思うかを説明してみたが、「はあ」と言われたところで会議がスタートしたので、その後のフォローができていない。
きのうは夏休みをもらい、午後から職場のある街を探索した。いつもは行かないエリアにブラブラ足を踏み入れる。ところどころ店がいれかわっていたり、古くからあったかもしれないけどきがつかなくて、初めて知った店があったり。計測機の専門店、なんて、知らなかったな。 楽しいな。
「ああ、いい町だ」ゴミゴミしていて、ちょっとへんだけど。
・会社でみかけた?いやいや、それは毎夏現れる一時間限りのまぼろしです。
(あいさつもせずに立ち去り、ごめんなさい)
Everyday my wife attacks me
うちのおくさんは、ぼくにいやがらせをすることを、毎日の小さな喜びとしている。
細かい意地悪をしてきては、「1日一回いやがらせ」と言って喜んでいる。
「ああ、いいおくさんだ」
コトアゲ、してみようかな。
「なに言ってるの?そんなの、当たり前じゃない」と即レスされそうだ。
それを受け容れている自分が、なんだかいいだんなさん、に思えてきた。
「ああ、いいだんなさんだ」
コトアゲしてみようかな。
「ああ、いいおれさまだ」
これじゃあ、ただの…。
■計測機器屋さん
■同じビルに入っているバー。
「ゲージ」って、計測機の針のことだよね…。
■となりの建物のローストビーフ店さん。夕方だったので、とても入りたい気持ちをなんとか抑え…。
「ああ、いい町だ」
(fin)